EL LABERINTO DEL FAUNO

 

制作年度 : 2006年

上映時間 : 119分

監督 : ギレルモ・デル・トロ

学生 K・M (2010)

あらすじ

1944年のスペイン内戦で父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らすオフェリア(イバナ・バケロ)は、この恐ろしい義父から逃れたいと願うばかり自分の中に新しい世界を創り出す。オフェリアが屋敷の近くに不思議な迷宮(パンズラビリンス)を見つけ出して足を踏み入れると、迷宮の守護神(パン)が現われ、彼女に危険な試練を与える。

感想

 率直にいって、この映画はとてもダークなシーンが多いと思った。戦争の悲惨さ、現実世界の悲惨さをまざまざと見せつけられた気がした。独裁主義の大尉がする行動は、どれも残酷で、目を覆いたくなるようなものばかりだった。

 そんな悲惨な世界だからこそ、オフェリアは物語の世界に救いを求めたように思うが、またその救いをもとめた物語、その世界にたどり着くための試練が、危険で過酷で、暗くて気持ちの悪い、辛いといったように、楽しんだり心安らげたりするものではなかったところに、この作品のほかのものと一味違う部分を感じた。しかしオフェリアは辛い現実世界から逃れたい一身で、過酷な試練を乗り越えていく。そして最後にたどり着いた試練がかわいい弟の身と引き換えに自分がその世界にいけるというものだったが、そこで弟を守ろうとしたところに、オフェリアの中で失われることのない純粋さを感じたし、その気持ちは私たちに忘れてはならないと監督が訴えかけてくる部分なのかもしれないと思った。結局オフェリアは自分の行きたい世界に行くことができずその短い生涯に終わりを告げることになってしまったわけで、皮肉にも彼女を死においやったのが、あの義父の大尉だった。その大尉も最終的には殺されることになるわけだが、そのシーンで自分に少し恐ろしいとも思える感情があったことに気づいた。私は、恐ろしい大尉が死んで、「安心」し、殺されても当然だと少し思ってしまった。本来命は尊いものであるし、どんな罪を犯しても人が人の命を奪う権利はないのではないかと日ごろ考えていたはずなのに、このときは人が人を殺すことを受け入れていたような気さえした。そのことにとても衝撃を受けたし、このわずかな自分でも気づかない「許し」が後に戦争のように人の命を奪う行為に結びつくのかもしれないと思い、パンズラビリンスを見たあとに怖くなった。